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マークからみた「RENT」
 映画を観て以来の憧れだったミュージカル版「RENT」を、先日の来日公演で初めて観て、今もまだその余韻に浸っています。

 よく「RENT」を初めて観た時はよくわからなかったという感想を見聞きします。私自身を振り返ると、映画版を7回、OBC(オリジナル・ブロードウェイ・キャスト)版のCDを聞きまくって、大方のストーリーも曲順も把握して観に行った割には、1回目を観た時は、音響その他のトラブルがあったことを差し引いても、めまぐるしく変わる場面や登場人物を追うのに忙しくて、やや消化不良だった気がします。

 それは、全2幕2時間半の中に、色々なテーマが盛り込まれていて、しかもいくつかのエピソードが同時に語られたりもして、すごく盛りだくさんになっていることや、作品に込められたメッセージがストレートな言葉(例えば、「tick,tick...BOOM!」のように、30歳の誕生日を前に夢をあきらめるべきかどうか悩んでいることをそのまま言葉で表現するような)ではなく、彼らの行動や選択からそれを感じ取るようになっていることからくるのでしょうね。
 それでも、私は直前に「tick,tick...BOOM!」を観ていて、物語の語り手(「RENT」ではマーク、「tick,tick...BOOM!」ではジョナサン)に視点をおくことができたので、それが理解の助けになりました。

 マークに視点を置くと、映像作家として「台本なしで」自分の撮りたいものを撮るんだと決心したクリスマス・イブから1年の間、彼が見た自分や仲間達にふりかかる作り事ではない現実(愛や友情、HIV、ドラッグ依存、貧困、仲間の死など)の重みを感じます。そして、時々一歩引いて語る姿に、あと何年生きられるかわからない仲間たちと、ひとり生き残ってしまう彼との間の埋められない距離感とそこからくる孤独感が伝わってきます。「Halloween」でもそういうことが語られていますね。

 いったんはバズラインの仕事を引き受けて、ある意味守りに入ったマークですが、不本意でくだらない仕事にうんざりして自分らしく生きようと決心します。先のことはわからないけれど今を精一杯生きようというところで彼が吹っ切れたことで、死の恐怖と戦っている仲間たちとようやく一体感を感じられたのではないでしょうか。

 最後に、マークが撮影した映画が上映されるのですが、白黒で、次々変わる画像の連続で、そこに何が映っていたかあまりよく観れなかったのが残念でした。3回観たうち1回目は1階席のかなり後ろだったの全体がよく見えたのですが、その時は、少なくともジョナサン・ラーソンの写真が含まれているのがわかりました。2回目はかなり斜めの席で映像が見にくかったし、3回目はセンターブロックの前の方だったからよく見ようと思ったのに、映像が明るく、薄くて、ジョナサンすら確認できず、手前のキャストに目がいってしまいました。でもきっと、イメージ的なものであって、その映像をくまなく見る必要はないんだと思います。マークの目に映った、良くも悪くも今を生きるふつうの人たちの姿を表現していたんだろうと、映画版のイメージを重ねつつ、想像しています。

 ロジャーが念願の歌を完成させ、マークが映画を完成させて、それは別にお金になるものではないけれど、そんなことはどうでもよくて、彼らはまさに芸術家として誇りを持って生きているのだと感じて、その若者らしいエネルギーに希望を見出すことができました。過去も未来もないけれど、今に感謝して、日々精一杯生きていこうと歌い上げる「Finale B」は私の好きな曲のひとつ。厳しい現実は変わらないけれど、あきらめずに生きようとしている彼らの思いが、観ている私にパワーを与えてくれる気がしました。

 「RENT」は色んな視点で見直すことで感じ方も変わってくるし、より深く理解していける気がします。そのうちまたちがった視点で考えてみたいなと思っています。

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【2006/12/01 01:47 】 | RENT(Broadway) | コメント(10) | トラックバック(0) | page top↑
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コメント

本当にそうですね。
それぞれのキャラクターが私たちの強さや弱さを抱えていて、
それでもやっぱり前を向いて生きるからこそ感動する。

孤独、って、誰でも直面するテーマだと思うんですよね。
それに一般社会と唯一具体的につながるのも彼。
だからこそ、私もMARKの視点が入ることで、
他のキャラクターもお話もぐっと深まっていると思います。

いい意味で、ずっとこういう若い気持ちでいたいなーと思っている今日この頃です(笑)。

【2006/12/02 10:23】 | URL | tomoko #-[ 編集] | page top↑

>「RENT」は色んな視点で見直すことで感じ方も変わってくるし、より深く理解していける気がします。
そうですね、私はまさにそれを実感しています。私が初めて「RENT」を見たのは8年前。でも正直その時は心に響くものはありませんでした。そして今年BWで見てディープにハマってしまいました(笑)同じ作品を見てもこんなに感じ方や捉え方が違うんだなぁ、と痛感しています。
その8年の間、毎回来日公演や日本版を見に足を運んでいた事を考えれば何か、感じるものはあったのかもしれないですけどね・・・

【2006/12/02 17:07】 | URL | ami #-[ 編集] | page top↑

tomokoさん
>それぞれのキャラクターが私たちの強さや弱さを抱えていて、
>それでもやっぱり前を向いて生きるからこそ感動する。
思い通りにいかない人生でも、歩き続けなければならないですからね。時々立ち止まったとしても。

>孤独、って、誰でも直面するテーマだと思うんですよね。
死が身近に迫っている人たちとはちがう、生き残るがゆえの孤独。
奥が深いな~と思いましたよね。
死が迫って人からみたら、ぜいたくな悩みかも知れないけど、でも、どんな状況の人にもその人なりの悩みや孤独感があるんですよね。

>いい意味で、ずっとこういう若い気持ちでいたいなーと思っている今日この頃です(笑)。
身体は衰えても気持ちだけは、ね(笑)

【2006/12/02 19:47】 | URL | himika #SFo5/nok[ 編集] | page top↑

amiさん
>同じ作品を見てもこんなに感じ方や捉え方が違うんだなぁ、と痛感しています。
はじめは、2回目行こうかどうしようかって言ってたもんね(しつこくてごめん)。
今のamiさんの感性になにか引っかかるものがあったのかもね。

>その8年の間、毎回来日公演や日本版を見に足を運んでいた事を考えれば何か、感じるものはあったのかもしれないですけどね・・・
それが何だったのか、あと何年かしたらわかってきたりして(笑)
まだまだ見続けますよね?

【2006/12/02 19:50】 | URL | himika #SFo5/nok[ 編集] | page top↑

>それが何だったのか、あと何年かしたらわかってきたりして(笑)
まだまだ見続けますよね?
そうですね、きっと後になったらわかるのかもしれないですね。
もちろん、まだまだ見続けますよ。早くも気分は2月のNYへ飛んでいます(笑)

【2006/12/02 23:23】 | URL | ami #-[ 編集] | page top↑

amiさん
>もちろん、まだまだ見続けますよ。早くも気分は2月のNYへ飛んでいます(笑)
まだまだ続きそうですね(笑)

【2006/12/03 00:41】 | URL | himika #SFo5/nok[ 編集] | page top↑

himikaさんNYへ行くんですか?
いいですね。羨ましいです。
>物語の語り手(「RENT」ではマーク、「tick,tick...BOOM!」ではジョナサン)に視点をおくことができたので、それが理解の助けになりました。
私もそうです。マークの視点だからこそ自分の心に入ってきたのだと思います。
日本の田舎で育った私としては同性愛、ドラッグ、エイズ、芸術家・・・
どれも無縁の存在です。
でもマークはキャラクターの中で一番自分に近い存在なのかもしれない。
同性愛者でもエイズでもないけれど、彼の大切な友人たちが次々と病魔に犯されていく・・・。ただ自分に正直に生きているだけなのに、タブー扱いされてしまう友人たちにカメラを向け孤独と戦いながら彼らなりの真実を伝えようとする。
私はマークほど強くは生きられないかもしれないけど、大切な友人たちのために何かできないだろうかと考えるし、今日を生きようという言葉も深く心につきささると思う。
マークの視点だから感情移入できるんですね。
でもひとつだけ理解できかねるのは、なぜドラッグに逃げるのか?という事です。
アメリカと日本の違いなのかもしれないけれど、それでロジャーがミミから離れていったし、ドラッグに逃げても何も解決しないのに・・・。
現実から逃げたいのはわかるけど、もう少し自分を大切にしてほしいと、日本人の私は思ってしまいます。

【2006/12/03 01:52】 | URL | Kim #-[ 編集] | page top↑

Kimさん
>>himikaさんNYへ行くんですか?
いえいえ、これはamiさんの話です。
ホントうらやましいですよね。

>私もそうです。マークの視点だからこそ自分の心に入ってきたのだと思います。
はじめは客観的な視点でカメラをまわしていたマークが、だんだんに自分の悩みとか置かれている状況に意識が移っていくことで、本当の意味で仲間にとけ込んでいったんだろうなと思います。

>でもひとつだけ理解できかねるのは、なぜドラッグに逃げるのか?という事です。
それこそがマークの視点なんでしょうね。
目前に死が迫っている恐怖や無力感は、その立場にならないとわからないことがあるのかも知れませんよね。
だからロジャーに外出を勧めたり、ミミにクリニックを勧めたりするんだけど、「じゃあそういってるお前は何なんだよ。自分だって現実から逃げてるじゃないか。」と突きつけられてはじめて、立場はちがっても自分も同じことをしてると気づく・・・。
私はそんな風に思ったんですが。

【2006/12/03 02:23】 | URL | himika #SFo5/nok[ 編集] | page top↑

>立場はちがっても自分も同じことをしてると気づく・・・。私はそんな風に思ったんですが。
なるほど・・・。人によって逃げる場所も違うということなんですね・・・。
深いですね。
RENTのキャラクターはそれぞれ問題を抱えながら、自分の人生を必死にいきているだけに余計に切ないですね。

【2006/12/03 02:40】 | URL | Kim #-[ 編集] | page top↑

Kimさん
>なるほど・・・。人によって逃げる場所も違うということなんですね・・・。
>深いですね。
本当に、深く考えさせられますね。

>RENTのキャラクターはそれぞれ問題を抱えながら、自分の人生を必死にいきているだけに余計に切ないですね。
このキャラクタのここが自分に似てるな~と親近感を感じたり、こういう気持ちわかるな~と共感できたり、どのキャラクタも魅力的ですよね。

【2006/12/04 11:23】 | URL | himika #SFo5/nok[ 編集] | page top↑
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